御師

御師 龍大夫邸跡③ 大々御神楽式正饗膳 神風館 大世古

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以前に外宮御師である龍大夫を龍大夫邸跡①龍大夫邸跡②でご紹介しましたが、今回は新しい画像を交えながら時代順にまとめてみたいと思います。

龍大夫は大世古に移る前は宮川の左岸・松倉村(現在の伊勢市小俣町宮前・松倉地区)に住んでいたと伝えられます。

昭和59年(1984年)に伊勢文化会議所から発行された「山田惣絵図」の外宮から月夜見宮付近を拡大した画像です(南が上になっています)。この絵図は寛文2~3年(1662~1663年)ころに制作されたものと考えられています。

大世古付近を更に拡大した画像です。真ん中に龍石見(りゅう いわみ)と描かれていて、ここが現在は大豊和紙工業となっている龍大夫邸跡になります。この頃までには現在の敷地跡(1,680坪)を有する、有力な御師になっていましたと考えられます。

安永6年(1777年)の「外宮師職諸国旦方家数改覚(しょこくだんぽうけすう あらためおぼえ)」によりますと、三方家(さんぽうけ)である龍淡路(りゅう あわじ・御祓銘 龍大夫)の配札数は武蔵・7万5918体、下総・8万4239体など〆て16万2779体となっていて、外宮の御師の中では三日市大夫次郎の35万3090体、久保倉大夫の25万9013体、福島御塩焼大夫の18万5172体に次ぐ4番目の多さです。

御師制度廃止前年の明治3年(1870年)の配札数は18万6千体でした。

龍大夫邸跡②でもご紹介した、参宮鉄道(現在のJR参宮線)が宮川駅までしか開通していない明治26年から明治30年(1893~1897年)に発行された御師講社の外宮の項の画像です。

龍大夫は明治4年(1871年)の御師制度廃止後も旅館業を続け、明治13年(1880年)の明治天皇の行幸の際には龍大夫邸が2日間に渡って、行在所(あんざいしょ)となりました。

そして明治33年(1900年)に龍大夫邸は外宮の北御門前で神風館(じんぷうかん)を経営していた大泉忠夫氏に売却されます。

明治40年(1907年)4月以降に神風館から発行された絵はがき「伊勢山田市 龍大夫」の画像です。※宛名面に三分の一の掛け線があり、キャプションに長距離電話(明治40年開通)の表記がある。4/6訂正

経営の規模を拡大し隆盛を極めていた神風館を父・角屋和惣治氏から受け継いだ大泉忠夫氏でありましたが、神苑会による外宮神苑拡張のために神風館が立退きすることになります。そこで永代大々御神楽講(えいたいだいだいおかぐらこう)を結成しながら明治31年には伊勢教会本院を立ち上げる(出典:御師廃止後の龍大夫と旧配札地域)など経営難に陥っていたと推測される龍大夫邸を買収するに至りました。

明治33年に立退き契約が締結され、明治35年に撤去が完了したそうです(出典:宇仁館物語 P27)。

「伊勢山田市 龍大夫」とセットの絵はがき「旧御師龍大夫 大々御神楽式正饗膳(だいだいおかぐらしき せいきょうぜん)」の画像です。

饗膳とは最高のもてなしのための酒や肴のことで、御師制度廃止前に御師邸で実際に出されていた料理をそのまま受け継ぎ、提供していたと思われます。

明治39年(1906年)9月1日のスタンプ印のある絵はがき「伊勢山田停車場前行幸の節大アーチ」の画像です。撮影は明治天皇の明治38年11月15日から18日にかけての伊勢行幸のときだと思われます。

「伊勢山田停車場前行幸の節大アーチ」の真ん中辺りを拡大した画像です。神風館支店の看板の下に龍大夫と書かれた看板が見えます。看板の下が隠れてしまっていますが、龍大夫用達と書かれていると思われます。この時点でも「御師 龍大夫」銘は宿泊客獲得に影響力があったのでしょう。

明治43年(1910年)に神風館から出された年賀状を包んでいた紙に押されていたスタンプの画像です。神風館の紋章(シンボルマーク)は星印でした。

参宮鉄道開業後はどんどん山田駅前の旅館街が発達して宿泊の中心が駅前に移り、尚且つ西田氏が率いる宇仁館(うにかん)の台頭もあり、大世古にあった神風館本店は客足が遠のき経営難になったと思われます。大正6年(1917年)に神風館本店は閉館し神都製紙(現在の大豊和紙工業)に売却されました。御師制度廃止後、50年近く経過して世代交代も進み、旧御師銘の影響力も無くなってしまったのでしょう。その後は龍大夫銘も見られなくなりました。

絵はがき「伊勢山田市 龍大夫」と同じ角度で撮影した現在の画像です。現在は大豊和紙工業さんの表門となっています。

大豊和紙工業さんの裏門側(東側)に残る土塀の画像です。作られた年代は不明ですが、現在でも時代を感じる立派な土塀を見ることができます。

表門の左側には説明看板と御師龍大夫邸跡の石柱が建っています。

出典:明治34年 三谷敏一発行 神都名家集、昭和8年 大行堂発行 明治天皇行幸年表、昭和59年 皇学館大学出版部 神宮御師資料 外宮篇2、昭和61年 皇学館大学出版部 神宮御師資料 外宮篇4、平成29年 谷口裕信 御師廃止後の龍大夫と旧配札地域、平成30年 秋田耕司著・発行 宇仁館物語、平成31年 水野逸夫 廃止後の伊勢御師、wikipedia

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