町並みの今昔 旅館編

伊勢音頭② 麻吉旅館 聚遠楼 つづら石 御岩世古 油屋跡

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前回、伊勢音頭①で千束屋、扇屋、備前屋、杉本屋の伊勢音頭歌などを紹介しましたが、今回はその続きになります。

旧参宮街道(古市街道)を外宮方面から進み、備前屋跡を過ぎ、300m余り進みますと近鉄鳥羽線の陸橋が見えてきます。

その陸橋の手前右側に油屋跡の石標があります。油屋は備前屋、杉本屋と並ぶ古市の三大妓楼のひとつで、寛政8年(1796年)5月に油屋騒動が起こり、7月には大坂角の芝居にて「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」が初演され、油屋は全国に知れ渡りました。明治21年(1888年)に旅館へ転業しました。

昭和初期に油屋から発行された絵はがきセットのうちの「盃ノ間舞台」の画像です。多くの妓楼に伊勢音頭の総踊りの際に舞台がせり上がる仕掛けがあったそうですので、画像の舞台もせり上がる仕掛けになっていたのかも知れません。

油屋の伊勢音頭歌としては「乗合盞(のりあいさかずき)」があり、替え歌として「新音頭 重盃(かさねさかずき)」がありました。

油屋跡を200m余り進みますと左に入る路地があり、電柱には「旅館 麻吉」さんの看板があります。

路地を入ると50mほど奥には麻吉旅館(あさきちりょかん)が見えます。

麻吉旅館は往時の古市を偲ぶ唯一の旅館で、創業年は不明でありますが、天明2年(1782年)の「古市町並図」に名前が見え、文化3年(1808年)に刊行された「東海道中膝栗毛」にもその名が見えます。

創業年が不明なのは、太平洋戦争時に書画や骨董、什器類を疎開させたところ、疎開先が空襲に遭ってしまい、古文書類が焼失してしまったため明治以前の歴史が判らなくなったそうです(伊勢古市のあれこれ 104p)。

丘陵の急斜面に建っていて「懸崖造り(けんがいつくり)」と呼ばれる建築様式で中心となる建物が5棟あり、6層構造となっています。麻吉旅館さんの一番高い所にある左側の建物が聚遠楼(じゅえんろう)と呼ばれ、江戸時代末期の建築になり国の登録有形文化財に指定されています。

明治時代は芸奴30人を常時抱え、伊勢音頭の舞台をもつ県下第一等の大料理店で麻吉の伊勢音頭歌は「つづら石」でありました。

階段を少し下った所の本館入口の画像です。本館も江戸時代末期の建築になり登録有形文化財に指定されています。本館と別棟の間には木造の空中廊下があり、廊下下の小路を「御岩世古(おいわせこ)」といい、昔は朝熊・二見への近道としてよく利用されたようです。麻吉旅館さんのfacebookによりますと「御岩世古」は市道だそうです。

渡り廊下の下をくぐり、階段下から見上げた画像です。天明2年(1782年)の「古市町並図」では画像左側の前蔵・石垣辺りに「麻吉」の名があり、お岩世古の反対側には階段の下側から「大松屋」・「みしのや」・「池田屋」・「嶋屋」がありました。これらの旅館?を吸収していき明治初期(1868年~)のころまでには現在に近い規模になっていたのではと推測されます。

大正7年(1918年)以前に発行された絵はがき「伊勢山田古市御料理旅館麻吉全景」の画像です。東側からの撮影で、現在の伊勢自動車道上辺りからになるでしょうか。右奥が聚遠楼、真ん中が本館になります。

大正7年以前に発行された絵はがき「伊勢山田古市御料理旅館麻吉事天南第一楼ヨリ東方朝熊岳ヲ望ム」の画像です。「天南第一楼」は最上階にある大広間のことをいい、画像右奥が朝熊山になります。

右側中段の小山を「浅香山(別名:宗安寺山)」といい、昭和49年(1974年)ころに開発されて五十鈴ヶ丘団地になり、平成5年(1993年)にはその手前に伊勢自動車道が開通し、さらに景色が変わりました。

階段を下りきると伊勢自動車道の側道にでます。側道から撮影した画像です。この三階建ての土蔵も江戸時代末期の建築になり、登録有形文化財に指定されています。

側道に下りた右側には浅香つづら稲荷が祀られております。御祭神は宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)になります。

「伊勢参宮名所図会」に「葛籠石(つづらいし)」が紹介されており、注連縄を引いて小社とし、その傍らに大岩の観音(御岩観音)といわれる観音堂がありました。この「葛籠石」が麻吉の伊勢音頭歌であった「つづら石」の由来になります。浅香山が開発された昭和49年に現在の位置に御鎮座されました。

浅香つづら稲荷の案内看板の画像になります。

出典:麻吉旅館 facebook、三重県ホームページ 文化財データベース、昭和46年 三重県郷土資料刊行会発行 野村可通著 伊勢古市考、昭和51年 三重県郷土資料刊行会発行 野村可通著 伊勢古市のあれこれ、昭和56年 古川書店発行 中川竫梵著 伊勢古市の文学と歴史

POSTED COMMENT

  1. 麻吉旅館 より:

    先日お電話でブログ掲載の連絡を頂いた麻吉旅館のウェブ担当です。
    非常に詳しい記事の投稿をしていただき、ありがとうございます。
    旅館の人間としても楽しく拝読させていただきました。

    もしよければ私共のsnsで紹介したいと考えておりますが、シェアしてもよろしいですか?

    • 丸六大夫 より:

      コメントありがとうございます。拙ブログでよろしければ是非シェアをお願いいたします。機会がございましたら是非貴宿に宿泊し、歴史ある古市を体験してみたいと思っておりますので、そのときはよろしくお願いいたします。

      • 麻吉旅館 より:

        ありがとうございます。
        Twitter、Facebook、instagramでシェアさせていただきました。

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